第1款 目標
多様化が進展する萌文化の構成員として、幅広い知識を身につけ、萌えに対する本質的理解を深めるとともに、一般社会の構成員たるオタクとしての自覚を育成し、“社会から認知された存在”としてのオタクキャリア発展を考えうる下地を養う。
第2款 各科目
第1 萌学B
1 目標
萌えについてオタク的立場及び一般社会的立場の双方から適切な理解を深めるとともに、日々変化する萌えに対して積極的に自ら考える姿勢を育成する。また萌えに対する知識を広く備え、多様化する萌えを受け入れる下地を作るとともに、萌えを形成する主体性を育てる。
2 内容
(1)萌えを取り巻く社会
一般社会から見た萌えの立ち位置という視点を導入し、オタクへの客観的な視点を身に付けさせる。萌えの置かれている環境を理解した上で、主体的に社会との関わりについて考えさせる。
(2)萌えへの歴史
萌えという言葉が確立する以前のオタクサブカル史について通史的に扱う。我が国のコンテンツ文化の発展並びにオタクというカテゴリーが形成されてきた経緯や大きな影響を与えた作品について把握させる。
(3)萌学の世界
萌えを体系的に学ぶ上で前提となる基本的な概念及び用語について理解させ、萌えに対する学術的理解という行為に対する興味・関心を高める。
ア 萌えとは何か?
萌えについての学術的理解の導入として必要な諸概念について理解させる。萌えの拡大している現状及び対立なき萌えの原則について扱う。
イ 萌えの覚醒
オタクは萌えをどのように獲得するのかということを扱う。萌え
ウ マクロ萌学
萌えに関する理論のうち、経済モデルを援用して萌えの増減を説明するマクロ萌学の考え方を把握させる。さらにマクロ萌学の説明が2000年ころを境として起こった萌えの商業化と符合することを理解させ、萌えの理論的理解についての興味・関心を高める。
(4)萌えの発展
萌えという言葉で括られる範囲についての関心を高め、萌えが通用するコミュニティについて考察させる。
ア 萌文化の形成
萌えという言葉の黎明期から現在の隆盛に至る流れについて把握させる。萌えの起源説、PC・インターネットコミュニティとの連携、同人作品における萌えの普及、メディアミックス及び深夜アニメの増加について理解を深め、総称して萌文化と呼ばれるコミュニティが形成に至る経緯について理解させる。
イ 萌文化の発達
オタクや萌えに関するコミュニティのあり方について把握させる。従来閉鎖的であった萌文化圏が開放に向かいつつあることを理解させ、一般社会の眼に触れる機会の代表例として痛車とメイド喫茶が与えた社会への効果について考察させる。
(5)萌えの機能
萌えの機能や性質について理論面から把握させる。萌えの構造を分析することを通じて、萌えを得るための仕組みについて理解させる。
ア 萌え要素
萌え要素を項目別に分類し、外見、環境・立場、行為の各々の面の特性について把握し、同時に萌え要素の限界について理解させる。
イ 萌え属性
萌えの発信機能である萌え要素に対して、萌えの受信機能である萌え属性の概念を理解させる。
ウ 萌えアーキテクチャ
萌えの機能を盛り込んだキャラクターを創り上げる上で、萌えの各機能を具体的に盛り込む萌えアーキテクチャの概念について理解させる。
(6)様々な萌え
具体化像としての萌えの類型について代表例を取り上げ、類型の確立した経緯や手法、特性について把握させ、萌えの体系的学習を行う上で必要なスキルの向上を図る。幼女、ショタ、BL及び主要な類型を取り上げ、萌えの多様性と関連させて考察させる。
3 内容の取り扱い
(1)内容の全体にわたって、次の事項に配慮するものとする。
ア 萌えの多様性を尊重し、特定の要素に偏らず萌えを巡る普遍的かつ俯瞰的内容を取り上げること。
イ 生徒が主体的に萌えについて考える導入としての内容を精選し、細かな事象や高度な事項・事柄には深入りしないこと。また、客観的な資料と関連させ、萌えの諸課題について考察させると共に、萌えについて公正かつ客観的な見方や考え方を深めること。
ウ 一般社会と萌文化圏の差異について充分理解させ、一般社会と萌えの共生を図る態度を育成させること
(2)内容の取り扱いにあたっては、次の事項に配慮すること
ア 内容の(1)について萌えのみならず鉄道やアイドルなど隣接するオタクジャンルについても取扱い、サブカルチャーと一般社会の対比を行うこと。サブカルチャーもまた広い範囲で一般社会を構成する一部分であることに留意すること。
イ 内容の(2)については、内容の(4)アに繋がる内容として、体系的な指導計画を作成すること。
ウ 内容の(6)については、男性向けの類型並びに女性向けの類型の両方を取り上げ、萌えについての一般教養として必要な知識の育成に留意すること。類型についての順序付けを行わず平等に扱い、萌えの類型として等しい価値があることを認識させること。
第3款 各科目における内容の取り扱い
(1)萌えの実例を用いた指導にあたっては、著作権上の配慮を心がけると共に、権利に対する意識を持ち指導計画の作成にあたること。
(2)情報通信ネットワーク上の言説を安易に肯定せず、広い知識を身に付けた上で生徒が主体的に判断する態度の育成を図ること。
(3)一般社会の存在を前提とする萌え社会のあり方の視座を常に意識させ、萌え全体の不透明性を薄めるよう留意すること。
(4)情報社会に適合しうるネットリテラシー育成の観点を意識し、指導にあたること。
指導者の主観の押し付けにならぬように配慮を行い、作品・キャラクターに対する過度な批評に踏み入らないこと。