我が輩は本郷からほど近い、まるで長屋のやうな下宿−アパアトメントなどと言ふらしい−の2階に棲んでいる。部屋の中は畳が四畳と半分、それに珍しくも簡単な水場が付いただけの質素なものであるが、我が輩は此処の住処がそれなりに気に入つてゐた。
ここに住まうやうになつてから、暫くした頃の事で或る。
空き家となつてゐた隣室に、若い男が越してきた。
眼鏡を掛けた随分と神経質そうな男だ。我が輩の第六感が、あまり関わり合ひになるべからずと、警告を発してゐる。
故に我が輩は、この男から極力離れるやうに心がけてゐたのであつた。
程なくして我が輩はうんざりすることとなつたのである。
安普請のベニヤ板からは、隣室の男の発する音が子細残さず漏れてくる。
その癖、我が輩が少しでも大きな音を発すると、どんゞゝとまるで気違いのやうに壁を叩くので或る。
我が輩は閉口した。
この神経質な男は、全く以て気が違つてゐるとしか思へないので或る。
朝は、怪しげな大音響の蓄音の音から始まる。
「ふぅ」やら「ほぅ」やら「身体が自然に動いちゃうんだ」といつた歌詞ともつかないやうな言葉が、様々な音楽に合わせて垂れ流されてゐるのである。
数日後、朝に流るゝ音楽は、ひたすら奇声を叫ぶもに変わつた。かろうじて「タピオカ☆パン」という単語だけが聞き取れる。
週が明けると、今度は「頭がパーン」という狂ったような叫びが繰り返されてゐる。
我が輩はもう限界だ。
男の家の表札には「東村」とあった。
ドカッ!バキッ!我が輩は戦死した。スイーツ(笑
帝國大學ではなく国立大学にやってきて、
なんとか動画を見てくだらない書類を書いているあたり、暇なんですか?
良い仕事があるんですがいかがですか?