それが、明らかになったのは、全てが終わる頃だった。
悔やんでも悔やみきれない。
もっと私がしっかりと彼女の心をつなぎ止めていれば、もしかすると防げてたのかもしれない。
………まだ諦めきれない。
時計を見ると、まだ長針が真下を、短針は水平から少しだけ下を向いていた。
日が落ちるまではまだ時間がある。
こういう時、蓮子がいれば時計をみるなんて―――――
……行こう。
どこに行けばいいかなんてわからない。でも私は動かないといけない。
とりあえず格好だけ整えて、私は外へ飛び出した。
悲惨倶楽部 ~Double plus ungood Solutions~
【1】
数日前のことだった。
私は秘封倶楽部の活動をすすめるべく、宇佐見蓮子の元を訪れていた。
トレードマークの帽子に、いつも身につけているバッグ。
そして見慣れない名刺入れ。
無意識のうちに蓮子の持ち物をチェックしていた私は、新しいアイテムに興味を示した。
「ねぇ蓮子、名刺入れなんて新調したの? 中に入れる名刺もないのに」
「ああ、これね。これは必要が生じたから手に入れたのよ。メリーにもそろそろ話してもいい頃合ね」
なぜだろう、私は蓮子がとても良くないことを口走る気がしてならなかった。
蓮子は名刺入れの中から1枚の名刺を抜き出した。
シンプルなデザインの名刺はどこにでもあるようなものだった。
強いて違和感があるとすると、真ん中ある宇佐見蓮子の名前と、左上にある私が見たことのないロゴが1枚の紙に収まっていることだろうか?
「メリー、あなたはこのロゴに見覚えはあるかしら?」
蓮子が指差す先にはUPFGという見たことのないアルファベットが並んでいる。
「ゆー、ぴー、えふ、じー?」
「そう、UPFG。私はね、この組織の一員となったのよ。もうただの学生じゃない。私はUPFGの京都支店長に任じられたの!」
ああ。蓮子は頭をお病みなってしまったのだろうか?
私が助けないと。
うん、これは秘封倶楽部にとっての異変だ。
前のめりになって名刺に書かれた謎の組織についての話を始めかけた蓮子の目の前に指を突きつけ、話を制した。
この後いろんな展開がある。
中略
【クライマックスの少し前くらいにでもすればいいんですかね?】
「ここが田端……」
田端駅の横を東北リニアが走り去っていく。
ここに私の蓮子を惑わした張本人――――東村氏がいる。
改札を抜けた先は陸橋の真ん中だった。教えられたとおり右に進むとすぐに大きなビルがそびえているのが目についた。
その屋上知覚に煌々と輝くUPFGのネオン。
この国の主要な企業を事実上支配し、国家を超えた国家として君臨しながら、それを決して表に出さない悪の秘密結社。
ビルに向かって一歩が――――踏み出せない。
街行く人が呆然と佇む私に訝しげな視線を向ける。
怖い。
道行く人全員がUPFG関係者に見える。
何食わぬ顔で歩くサラリーマンも、近所を散歩している老人も、無邪気に駆け抜ける児童も、皆がUPFGという巨大な悪に取り込まれてしまっているのではないか……
私は足が竦んで動けなくなってしまった。
ここまで書いた。