さて、土用の丑の日である。
そこで時節物には案外敏感な東村氏は、鰻を食いにパムパム君、汚川さん、さわださんと共に鰻を食いに雨の中をフラフラと彷徨い歩いたのである。
鰻をおいしく頂いた後は、路地を抜けて帰路につく。
といっても暗い松山の夜道だ。
つまりそこは忍者の罠だらけである。
道路の脇に溝がある。
深い溝だ。ここに落ちたらひどいことになるだろう。きっと。
だから私は気を付けるのだ。悟られない様に。
少しショートカットをして、角地の駐車場を斜めに歩く。
駐車場に柵はなく、代わりに小さな溝がある。
これを跨がないと、大きな道に出れない。
だからそっと、あまり目立たぬ様に、溝を跨ぐ。
出来るだけ自然な動きで。
そして振り返ってニヤニヤすると、パムパム君が掛け声と共に溝を跳び越えた。
私は舌打ちをする。失敗したのだ。
その時、不意に思い出したのが、映画「サウンドオブミュージック」のことである。
あれの主人公はトラップ一家という。
きっとサウンドオブミュージックという話は、主人公の一家の子供達が様々な知恵を駆使して村人を罠に仕掛けた結果、ハブられて、アメリカに逃げざるを得なくなったという話だろう。
救いがたいキャンディキャンディみたいなイメージ。
そんな妄想を汚川さんに告げたら、呆れられた。