いつまでたっても片づかない。
それは東村氏が蟹雑炊をいつまでたっても食べないからだ。
「食べないなら冷蔵庫にしまおうか?」
まるで子どもの相手をしている気分になる。
「いや、食べる食べる」
そう答えはするものの、いつまでたっても食べる様な気配を見せずに、ダラダラと彼は床に寝そべっている。
大体、東村氏は普通に食べるのも遅いのに、加えてコレだ。
既に日付は変わっている。
僕は幾度目か分からない催促をすると、ようやく彼はのっそりと起きだし、食事を始めたのであった。
10 【就寝体制】
ゲストであるパムパム君にベッドを譲り、僕は床で寝ることにした。
東村はそこら辺に転がしておけばいいだろう。
「ぷろさんや、冬用の掛け布団をおくれ」
東村がそんなことを言い出した。
まだ10月だ。冬用の布団を出すには少し早い時期。押入の奥底に閉まってある。
出すのが面倒。全く持ってコイツは……
だがそこで最終的に出してやるのが僕の優しさだ。
歯を磨き戻ってくると東村は、服も着替えないままに、まるで太巻きの様に冬用の布団にくるまって間抜けな寝顔を晒していた。
………散らかした段ボールとか片づけろよ……
さて、僕も寝るかと思った頃に大学の友人から電話がかかってきた。
今から原付で夜のツーリングに行くという。
東村を家に置いたまま出かけることに抵抗はあったが、まぁ寝ているし、大きな問題は起きないだろう。
パムパム君に気を遣い、そっとアパートから抜け出すと、綺麗な大きな満月が低い空に浮かんでいた。