2007年01月18日

スタバとセイコーマート

「ねぇ、なんか最近私のこと、避けてるでしょ?」

 ちょっとした時間潰しに立ち寄ったスターバックスで、偶然見付けた顔。
少し前までは、ちょっとした立ち話をするくらいの仲だった友人が、冬休みを挟んで、しばらく顔を合わせないうちにすっかり疎遠になってしまった。

 どこかソワソワと落ち着かない雰囲気で、その友人は
「そんなことなんてないさ」と否定するが、口先だけなら何だって言えるだろう。
 事実、そんな風に釈明しながらも、視線が泳ぎ、チラチラとあたりの様子を気にするような仕草を続いている。
嘘ばっかりだ。
 それはまるで……私から早く逃げたがっているかのようにすら見える。

 何か気に触ることでもしただろうか? だけど心当たりになりそうなこともない。
強いて言えば、この間、金が無くて食べるものにすら困るとという話を聞いて、銀座・資生堂パーラーでコース料理を食べた経験談を高圧的な口調で語ると同時に、君は無教養だと罵倒したことがあったが、それくらいたいしたことではないだろう。
 ロスでは日常茶飯事(にちじょうちゃはんじ)の出来事だ。

「……でも、」
「ところで…」
同じタイミングで話を振りかけ、つい止めてしまう。
なんというベタな展開。イマドキのギャルゲーですらこんな描写はない。
……いや、私は一体何をたずねようとしたのだろう?
なんとなく、間を埋めようと口を開いたが、私と友人の間に共通の話題なんてそもそも無い。
 そう、初めからさほど親しい仲というわけでもないのだ。
それを無理に「避けていない?」なんて問いつめてみたところで、今までの人間関係から考えれば、そんなにおかしくだってないはずだった。
どうして……

 友人はまるで何か焦るかのようなそぶりを見せだした。
腕時計に目をやり、一刻も早く私の前から立ち去りたい、そんな雰囲気を隠すことなく、落ち着きがない。
そんなに私と会話を交わすのがイヤなのか?

 どうしてか、友人のそんな態度が癪に障った。

「どうしてそんなに……私のことを避けるの!?」
少し強めの口調で問いつめるが、友人はバツが悪そうに、
「ちょっと今は……」とだけ言い残し、身を翻す。
このまま行かせてしまってはダメだ。
反射的にそう思い、友人の袖口をつかもうとする。
だが友人はまるでその動きを予測していたかのように、体を落とす。
あの動きは振り返ると見せかけたフェイントか!?
友人はそのまま体を起こし私の背後をとった。
延ばしかけた手をそのままスイングするように、背後に回り込んだ友人を捕まえようとするが、動きが1テンポ遅かった。
友人は狭い店内とは思えないほど俊敏な動作で、椅子とテーブルの間を走り抜け、行き止まりの扉へと駆け込む。

 扉が締められ、同時に鍵の落ちる音。
私と友人を隔てるたった1枚の薄い扉。
ダウンライトに照らされた木目の扉の目線の高さに、真鍮のプレートがかかっていた。

 やがて、扉の奥から篭もった水の流れる音が聞こえるころ、私は既にスターバックス自体を後にしていた。
店を出て、タクシーを拾う。もう一刻も早くこの場から立ち去りたかった。
自宅の住所を告げ、流れゆく車窓に目をやりながら、先ほどの出来事を思い返す。
 あの友人は限界だったのだろう。
今ならわかる。
どうして友人があんな態度をとっていたのか。

「あ、スイマセン。ちょっとそこのコンビニによってもらえませんか?お手洗いを借りたいので…」
私を乗せたタクシーは、道を外れるとオレンジ色の看板と、コーナーに設置されたレジが特徴的なコンビニエンスストアの駐車場に静かに停まった。




posted by 東村氏 at 14:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 妄想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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