2007年02月18日

低頻度更新再開のお知らせ

表題の通り>挨拶






「すみませんが、席をお間違いではありませんかな?」
半ばウトウトとしていた私の意識を引き戻したのは、初老の紳士の言葉だった。
私は慌てて指定席券を確認すると、確かに窓側と通路側を間違えていた。
平謝りで席を譲る。
初老の紳士は軽く会釈をするとゆったりと席に着いた。
ほどなく二重ガラスの向こう側で、微かな喧噪と発車ベルの音が鳴り響くと、ゆっくりと列車は動き出した。

地下のホームから地上にあがると、改札を通り抜けたころはまだ明るかった夕陽は、ビルの向こう側へと消えかけ、薄暮れ時特有の群青の空が東側に広がっていた。
車内の灯りが窓に映り、流れゆく街のネオンの光の筋と混ざり合っている。
おもむろに初老の紳士が話しかけてきた。
「お見受けしたところ、旅行か何かでこちらにいらっしゃったのですかな?」
私は話しかけられるとは思ってもいなかったので、いささかとまどいながらも
「はぁ……ええ。山陰から参りました」と、答えると、紳士は微妙に表情をほころばせ
「ほうほう、そうですか。そうですか。」と、二回繰り返し
「私はね、アンタみたいな年頃の頃にヨナ……ヨナ……、なんといったかなぁ……」
「…米子……」
「ああ、そう、それだ。米子。米子にね、行ったことがあるんですよ。」
「へぇ、それは。まぁ何もないところですよ」
私は故郷からほど近い田舎町を思い出し、幾分かウンザリとしながらも紳士の話に耳を傾けた。
「いやぁそんなことを言ってはいけません。米子にだっていいところがありますよ」
そう言って紳士は言葉を切り、私から視線を外して言葉を続けた。
「探せば、の話ですがな」

つまりこの初老の紳士は米子には探さなくとも明白な良い点は米子にはないと言いたいのだろうか?
私は故郷まで馬鹿にされたしょうな気分になりながらも、心のどこかでこの紳士の言うことが否定できない自分がいることに気がついていた。

「あれはまだ日本が戦争から立ち直りきっていない時代のことでした。私は当時、ある小さな会社の社長でした。松江から米子、そして鳥取へと新しい商売を探して旅をしていました」





(もう寝る)


posted by 東村氏 at 01:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 妄想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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