2007年02月20日

猫とナカムラ

問 この文章を読んで、著者が言いたいことを説明せよ



或るところに一匹の猫がいた。
その猫には飼い主がいない。
さりとて野生でもない。

都会の雑踏の中で、幾人かの決まった人間と大多数の気まぐれを起こした人間から餌を恵んで貰い、足りなければ路地のゴミをあされば腹は満たされる。
猫は、そんな日々を送り今日まで生き延びてきた。

猫を餌付けする幾人かの一人。
それがナカムラである。

ナカムラは猫が好きだ。
猫を愛している。
それは勿論性的な意味を多分に含む猫好きということだ。
なぜ彼が猫を好きになったのかというと、彼をよく知る者に言わせればこういうことだ。
「彼はいつの日からか、2次元と3次元の区別がとんとつかなくなってしまった。だがある日、秋葉原の歩行者天国の真ん中で、器用なことに車線を引く白線とアスファルトの段差に躓いて、転び頭を強く打って以来、2次元と3次元の猫にしか強く関心を示さなくなってしまったのだよ。だが案外ナカムラにしてみれば、その方が幸せなのかもしれないと、私は最近強く思うのさ」

なるほど、しかし彼は猫が好きだからと言って、餌付け以外には何もしない。
たまに世間を賑わすような虐待をする訳でもなく、それどころか彼は猫を自宅で飼うことすらしていない。
では一体、猫とナカムラの間には何があるというのだろう。

話は2年ほど昔にさかのぼる。

人気のない都心の再開発地域。
道の両側には高層ビルがそびえ立ち、まるであたりを見下すように威圧する。
ナカムラは、等間隔に並べられた街灯が照らす広い誰もいない道を歩いていた。
その足取りは重いとも軽いとも言えない。
まるで生気を感じない、どこか不安定な歩き方は都会に長く住みすぎた疲れによるものか。
やげてナカムラの前に交差点が現れた。
信号が赤く点っている。
ナカムラは辺りを見回すと、横断歩道を渡り始めた。
頭上の信号は青。目の前の信号は赤。
道行く車もなければ見てる人もまたいない。
その時、足下に違和感を感じた。

よく見ると、1匹の黒い猫を踏んでいた。
ナカムラが足をどけると、猫は一声「ニャア」と鳴いてどこかへと走り去る。
「待て。待つんだ。父さんだろ」
ナカムラは猫を追いかけ始めた。

猫は塀の隙間へと逃げ込んだ。
ナカムラは中へ入れない。
猫はやがて見えなくなった。
ハァハァと、息を切らせたナカムラは今自分がどこにいるのか判らない。
見覚えのない街並みが広がっている。
ナカムラは思った。
「ここは異世界に違いない。あの猫は使い魔で、僕をこの世界へと呼び寄せたのだ」
ナカムラはこの世界について何か手掛かりが欲しかった。

暗い街の中に、明るい光を放つ場所がある。
コンビニだ。
開店当時の営業時間を名に掲げたコンビニに入り、街の情報をあさった。
ない…ない…ない…あった。
赤い表紙のフリーペーパー。
ホットペッパーと巷では呼ばれるその一冊の本を握りしめ、ナカムラはコンビニを後にした。

同じような形の集合住宅に挟まれた小さな公園で、月明かりだけを頼りにナカムラは必死に探した。
この本の中に、何か大切なことが書いてあるはずなのだ。
だがいくら探しても見つからない。
そのうちどんどんと東の空が白み始めてきた。

黒い闇に覆われていた空は、次第に群青から鮮やかなオレンジへと色を変えつつあった。
朝陽が昇る頃、鳥がさえずり、街が目覚め始める。

ガタンゴトンと遠くで電車が走る音がする。
ナカムラは気がついた。
「あの走行音は……京急だ」

ナカムラはいつの間にか自分がいるべき世界に帰っていたのだ。
その証拠にほら、見慣れた赤い電車が走っている。
ホットペッパーを無造作に公園のゴミ箱に突っ込み、公園を後にしようとすると、ベンチの下から一匹の猫がはい出てきた。
その猫が昨夜見た猫と同じ猫かどうかは知らない。

もう猫など、ナカムラからしてみればどうでもいいのだ。
ただ何の気の迷いか、ポケットに入っていた魚肉ソーセージを契り、猫に投げつけてやると、猫は「ニャア」と鳴いて一心不乱にむさぼり始めた。
その様子がなにやら滑稽で、ナカムラは猫に餌付けを始め、そして猫に目覚めたのである。

今日もナカムラは猫に餌を与える。
今日も猫はナカムラを待っている。

それは、とてもありふれた都会の1風景にとけ込んでいた。




ネコとナカムラ スタッフ



原作 東村 光「猫とナカムラ」(講談社2008年)

主演 ナカムラ 中村
     猫  ネコ

作画監督 藤代悟

音響監督 朝里鉄労


演技指導 マイケル谷岡

広報 矢野元治

演出 椎名慎吾

監督 東村光

プロデューサー 地獄の椎茸


製作 UPFG Internatinal 2007


終劇


posted by 東村氏 at 00:28| Comment(2) | TrackBack(0) | 妄想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ナカムラだけど、何か質問ある?
Posted by N at 2007年02月20日 01:19
鳴子ハナハルのネネはエロいとゆうことをゆいたかったんだと思います
Posted by 葱 at 2007年02月22日 10:04
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