2005年10月13日

第19次東京旅行記

□ Reazon///



問いかけられた言葉。

「なぜ、あなたは、東京へと旅立ったの?」


彼は黙している。


「……どうして、松山では……ダメなの?」


彼は不意に顔をあげた。
じっと私の瞳を見据えている。

開け放たれた窓から不意に風が吹き込み、カーテンを揺らした。

「それは………」

彼はようやく言葉を紡ぐ。
その明かされなかった突然の旅立ちの理由について。
私はただ、彼の次の言葉を待つばかりだった。




□ Departure///

朝6時。
私は政府専用機(自転車)にて、松山駅を目指していた。
左手の手首には、かつて東京で買い求めた銀色の時計が正確に時を刻んでいた。
蒼い表示板に細い二本の針。
私はちらりとその思い入れのある腕時計に目をやる。
―――ああ、間に合わない。

駅の改札口に到着する。
すると、乗る予定の普通列車がゆっくりを駅のホームから滑り出していった。


ベルがホームに騒がしく響いたかと思うと、かすかな振動とともに扉が閉められた。
高松・岡山行特急しおかぜ・いしづち号の車上の人として、私は曇り空の松山駅をゆっくりと後にする。
リクライニングシートをゆったりと倒し、ポンの工場を右手にどこまでも広がる海を左手に眺めながら、旅の道連れとなった2人と共に、乗り遅れた普通列車を追いかける。
こんなとき、――そう、列車に乗り遅れたとき―私は四国の鉄道に大きな感謝をする。


だって、この単線のおかげで私の乗る特急は、伊予北条駅で普通列車に追いつくのだから。




□ TransitT///

越線橋を登ると、南側に松山の街並みが広がっているのが見えた。
私がここまでに乗ってきた特急列車の姿はもう無い。
赤いテールライトの光の尾を残して走り去っていった。
私は3番線に取り残された普通列車に乗り込むと、中に不意の先客がいた。
――大学の後輩である彼と、偶然の出会いに驚いているうちに普通列車も伊予北条の駅を後にした。

列車は東へと走ってゆく。
途中の駅で、後ろの車を切り離し、身軽になった列車は四国の自然の中をゆっくりとゆっくりと進んでゆく。
いつ終わるとも知れない普通列車の旅。
各駅ごとに地元の人の乗り降りがあって、その地域に根付いた郷土の心が感じられる。
そんな旅を期待していたのに……

ここは四国。
そもそも人の乗り降りそのものが無いんだ。


ずいぶんと長い時間を走った気がする。
いつしか時計の短針は、はるかに高いところまで上がってきていた。
朝10時。
列車はようやく終点多度津へと到着した。

ゆっくりとゆっくりと走った列車は、最後までゆっくりだった。
さて、乗換えだ。
ゆっくり乗り換えようと思ってたが、どうやら私は甘すぎたようだ。
列車の到着が10:02.
次の列車の出発が10:03.

慌しく、反対側のホームに止まっている列車に駆け込むと、すぐに扉が閉まり列車は多度津の駅を後にした。


posted by 東村氏 at 17:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 総務 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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