脅威は、どこからでも我々を狙っている。
そして脅威は、我々を襲ってくる。
これは、重大なる脅威にたった一人立ち向かった東村氏の勇気ある行動の記録である。
その日、官邸の夕食はインスタントのラーメンであった。
心地よい冷房のよく効いた部屋で、トムヤンクンラーメン(原産国タイ)に舌鼓を売っていた東村氏の視界の端を、黒い巨大な影が横切った。
そう、Gである。
北海道では基本的には見ることのない超巨大昆虫。
全人類最大の脅威にして抗いがたい強大な力を有する深刻な恐怖の具現化そのものである。
東村首相は思わず大声をあげた。
しかし一国の首相として立ち上がらねばならない。
だがあまりにもGの脅威は大きい。
人類の最大の武器は、すなわち社会性である。
東村首相は迷わず近隣に居住する友人宅を訪れ、呼び鈴を鳴らした。
しかし反応がない。
どうやら不在のようだ。
やむを得ない。東村首相は勇敢にもたった一人でGに対せざるを得なくなったのである。
緊急の閣議が開かれ、国軍の出動と潜伏が予測される地域の疎開を実施する。
国軍は対G用長距離砲キンチョールを配備した。
キンチョールは昨年発生したアシナガバチ拠点を殲滅し、先週鑑定に進入した蜂にも有効な手段として機能した。
きっとこれで勝つるはずだ。
Gはどこかに身を潜めたのか視認できるエリアから姿を消した。
政府は国軍と共に哨戒活動を密にし、約15分後再び姿を現したGを発見することに成功した。
発見と同時に国軍に出動命令が下る。超長距離砲キンチョールの引き金は東村首相自身が直々に引いた。
噴出されるキンチョール。しかし脅威の具現化Gはキンチョールを身に受けながらも必死に逃走を図る。
我々は勇敢にもGを追尾し、キンチョールを浴びせ続けた。
永遠にも続くかに思われた10数秒、Gは壁面より落下し、最終的に机の下にて転覆した。
我々はさらにキンチョールを噴出し、Gの脅威を無力化する。
我々は勝利したのである。
Gという脅威に。これは人類にとって偉大なる一歩である。
そしてこの偉業を達成した東村氏はまさに人類の歴史に名を残されるべき人物であるということが再び確認されたと言えるだろう。
だが我々の戦いはこれで終わったわけではない。
いずれ再びGを合見える時が来るかもしれない。
この勝利を忘れることなくGに対しても決して屈しない強い東村氏の下でわが国は永遠の繁栄が約束されるのであろう。
(文 東洋帝都新聞論説委員 佐久間三春)